ブリード

戦略と勝算

手持ちの幼虫が400頭を超えてきました。
完全にキャパオーバーだろうと自問自答しながら日々を過ごしています。

僕の本業はSE兼プログラマー兼経理です。
上流工程から下流工程へとシステム設計をし、論理的にまるで物語のプロットを構成するかのように販売管理システムを構築しています。
一介の中小企業の内製システムではありますが、分離されたサブシステムを一筋の道として構築していく様は、製作者冥利に尽きる思いです。
如何にしてコストを削減するか、如何にして効率化を図るか、あらゆる観点からボトルネックを検証しては根絶やしすることに尽力しています。

どのようなビジネスに置いてもコスト削減と効率化は顕在化する大きな課題点です。
コストは経済的コストを指すケースが多いですが、時間的コスト・肉体的コスト・頭脳的コスト・精神的コストといった個々の分類で大別されます。
効率やボトルネックに直結する種々様々なコストを勘案し、業務になぞらえて効率良くオペレーション出来るようにリスクヘッジを施して行きます。
要約すれば僕の仕事は、各クライアントである社員を総括するシステムサーバーの監理拡張です。
如何にして無駄なルーティン・所作を減らし、現場の活況と生産性を向上させるか。
日々固定化されたルーティンワークは、人をある種の錯綜状態にしている可能性も有り、冷静に見極めなければなりません。

昆虫飼育に置いても型通りの飼育法がある程度確立されています。
温度に湿度、初令幼虫の管理に大型ケースへの移行のタイミング・・etc
年輪を刻むように先駆者の方々が試行錯誤の末、現代のハイアベレージの飼育法を確立されてきました。
新参者も気軽に飼育を開始し、大型を射程に捉えることが出来るのも先人の努力の賜物です。
素直に敬意を表しています。

ただ、僕の野暮な性格上、型通りの飼育では少々退屈に感じてしまいます。
せっかく貴重な時間を献上してまで飼育に没頭しているのですから、相応の対価を求めてしまいます。
昨年4月に新居に移り、ブリードルームの拡充に成功したのですが、それでもせいぜい6畳です。
頭数を抱えようと思えばやはり頭打ちは否めません。
本当に贅沢な悩みではありますが。
結局突き詰める所、僕の行き着く先は「小ケース飼育」です。
小ケース飼育はデメリットばかり挙げられますが、それを凌駕するほどのメリットが多々あると思っています。

僕の理想は、『ローコスト、省スペースでの超還元大型個体量産』です。
飼育下手を棚に上げる訳ではないですが、「体重が桁外れに乗った」には正直あまり興味がありません。
現に、抱えている幼虫はほぼ全て『低体重からの超還元』血統です。(一部アウト♀除く)

『小ケースは小さすぎる、体重を乗せるならやはり大きなケースにしないと駄目だ。』
誰しもが「素質のある幼虫」には大きなケースで少しでも体重を乗せたいと思う。
だからこそ、期待出来る素質のある幼虫ほど大きなケースで飼育されているかと思います。
でも、この行為こそが「小ケース飼育否定論」を担ぎ上げているようにも感じます。
なぜなら、素質が見限られた小さなケースで飼育される幼虫は、高確率で小さく羽化するから。
そもそも同じ土俵にすら上がっていないのではないかと、最近考えています。

ただ、前提として『小ケース飼育が大型ケース飼育を凌駕する』事だけは無いと確信しています。
僕が本意とする所は『小ケース飼育でも観察眼と工夫次第で、大型ケース飼育に見劣らないような結果を出せる』という点にあります。
大型ケース飼育最大の利点は、放置飼育でもエサ切れを起こさず、常にマットを口にすることが出来る環境が有り、且つ乾燥しにくい点かなと思います。
小さいケースではマットが減ってくると、自ずと栄養が期待出来ない自らの糞等に囲まれるリスクが上がりますし、マットの絶対量が少ないが故に乾燥しやすいのもデメリットです。
これはリスクという観点で言うと大型ケースにかなりアドバンテージがあります。
でも本質的な事を言うと、厳格なルールさえ守ればこのリスクはヘッジすることが出来ると思います。
果たしてケースの大小だけで幼虫が生涯口にするマットの総量は決定的に変わるのでしょうか?
僕は小ケースでも、エサ切れさせずに短めのスパンでマット交換を行えば誤差を最小限に抑えることが出来るのではないかと考えています。
幼虫が共生菌等でマットの栄養を吸収しやすい環境を構築しますが、マットの絶対量が少ない小ケースでは環境構築が大型ケースに比べ早いはずです。
短いスパンでの交換は、幼虫にとってストレスになりますが、環境構築の早さで、ある程度相殺されます。
短いスパンと言ってもせいぜい2ヶ月半ぐらいでの交換なのでそう大差は無い気もします。

幼虫の「空間認識能力説」には懐疑的です。
ですが、大型幼虫の小さなケースでの飼育はストレスだろうなとも思います。
僕が小ケース飼育でも勝算があると考えている点の一つに『低体重血統』が有ります。
幼虫自身サイズが小さいわけですから、いわゆる「体重が乗る血統」の幼虫よりもストレスは格段に少ないものと思われます。
小ケースで180gや200gといった超大型幼虫を作るのは、正直現実的では無いと思います。
僕が『低体重からの超還元血統』ばかり飼育しているのは、この点が一番大きいです。
『体重が乗る血統』の幼虫よりも、確実に『体重が乗らない血統』の幼虫の方がケースの大小によるリスクは小さいです。
UB67SAOGN x ティーガーも、アンビタル零I x FFUB67系の幼虫も140gを超えてくると170mmが見えてきます。
僕の失敗だらけの小ケース飼育でも120~130g台は普通に量産出来ています。
180gも200gも乗せる必要は無いのです。
『体重が乗らない』というのは一見すると短所に感じますが、僕はそうは思いません。
「1gあたりの還元率」が圧倒的に秀でている。
素晴らしい長所ではありませんか。
『体重が乗りにくい超還元の幼虫を、如何にして必要最低限のサイズのケースで体重を乗せ、量産出来るか。』
僕が追求したい飼育技術の理想です。

御託を並べましたが、上記の点から今期も僕は全ての幼虫を小ケースで飼育します。
結果は1年経たないと分かりません。
愚かで見当違いが甚だしい飼育法だとしたら、大量の平凡な羽化個体達に囲まれることでしょう。
でも決して僕はそうは思いませんし、くどいですが勝算はあると見ています。
現時点でも、初令幼虫の管理を変えるだけで明らかに前期より体重が乗り始めていますし。
『大型ケースを使用しないことによる安定という名の機会損失よりも、省スペース故の数を飼育することが出来るという機会獲得』の方が専ら素晴らしいアドバンテージなのではないかとも感じます。
良い個体と巡り会える可能性が飛躍的に高くなる訳ですから、それはケースの大小のリスクを凌駕すると言っても過言ではないでしょう。

ちなみにですが、1年後『小ケース飼育ではやはり頭打ちで結果は・・・』となったとしてもそれはそれで良いと考えています。
だって、ケースを大きくするだけでアベレージが上がるのですから(笑)
大事なのは今まで培って来たものを尊び、それを礎にスキルを磨くことです。
僕はブレずに自分なりの王道を進みます。
他人の主観的な論理よりも、自身がトライし生きたデータを蓄積することに意味があると思うからです。
失敗も長い目で見たら素晴らしい功績となり得るでしょう。

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コメント

    • ZUZU
    • 2018年 4月 27日

    こんばんぴー
    相変わらずの素晴らしい観点ですね。
    劣勢遺伝の記事もですが興味深い内容でごわす!
    まぁ結果出なけりゃバカにする奴が出てくるでしょうけど
    そんな凡人の意見無視して新たなブリードを開拓してねw
    応援してマッスル‼

    • ZUZU
    • 2018年 4月 27日

    あっ‼
    長文お疲れです。
    良い記事なんですけど、文字数にして40文字位しか頭に残ってませんw
    頭の引き出し少なくてスミマセン
    でもこんなアナログが自分が情けなくもあり、可愛くも有ります‼
    今後も宜しくお願いします(ToT)

      • ktwf87
      • 2018年 4月 30日

      ZUZUさん
      コメントありがとうございます!
      努力の工程を馬鹿にされても全然構いません!
      なぜならいい結果への通過点ですから。
      どんな傑作も沢山の駄作の末に出来上がっていますからね(^^)
      過去を教訓にすることはあっても、過去を意味なく振り返る必要もありませんし♪
      自分のペースで頑張ります(笑)

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