ブリード

蛹室形成不全のすすめ

僕はヘラクレスが造形した蛹室がケースの角っこであったり、明らかなサイズ不足だったりすると『しめた。』とほくそ笑みます。
小ケース飼育で人工蛹室ありきで管理しているので、幼虫に見合った余裕のある正常な蛹室に特段固執はしていません。
むしろ「角曲がり必至の劣悪な蛹室」こそ歓迎であり心待ちにしていたりします。

通常幼虫は蛹室をこしらえる際、体液や糞を駆使し回転運動により見事な造形を施します。
造形後前蛹となり、このタイミングで飼育者は幼虫を取り出して体重を計測し、「前蛹体重」としてデータを控えます。
最終体重と比較するとかなりの確率で体重が減少しており、これが俗にいう「ダイエット」となります。
このダイエットを低減する為によく言われるのが、マットの「水分」や「量」を意図的に増やして、蛹室を形成しやすい環境を与えてやることだと思います。
実際多湿であれば余計な体液を使用する必要がありませんし、蛹室形成部の上部に一定の重量が掛かれば最低限の回転運動で固めることが出来るので、非常に重要なことだと思います。

しかし、この際案外目が付けられないのが「蛹室の造形面積」だったりします。
単純に『幼虫がこしらえる蛹室は、造形面積が小さければ小さいほど余計なエネルギーを消耗しなくて済む』のではないでしょうか?
僕はヘラクレスには正確無比な空間認識能力は備わっていないものだと確信しています。
故に一見正常な蛹室であっても長さが足りていなかったり、角曲がりを誘発するような角っこに意図せず作ってしまいます。
小ケースはマットの総量が少なく有効体積が小さいため、高確率で想定より小さな蛹室を形成させることが出来ます。
僕はここにも小ケース飼育の妙を感じています。
「必要最低限の大きさのケースで低体重血統の幼虫を最大限に大きく飼育し、意図的に小さな蛹室を形成させる」までが僕の考える究極の合理的な飼育です。
まあ、完全に造形場所までコントロール出来る訳ではないので運任せとなってしまいますが、歪で小さな蛹室ほど僕は喜んでいます(笑)

そういえばある書籍で知ったのですが、「国産カブト」の幼虫は集団分布しているそうです。
共生菌の共有の為なのか、あるいは種の存続確率を高める為なのかは定かではありませんが、そういった習性があるようです。
ヘラも国カブも同一ケースで複数個体を飼育すれば同時に蛹化したりしますが、あれは片方あるいは両方がコストを払って蛹化時期を調整しているようです。
これも恐らく種の存続確率を高める為の本能なのでしょう。
書籍内の検証で興味深かったのが、「何故他の幼虫に蛹室が破壊されないか?」です。
僕はてっきり蛹室に含まれる成分を嗅ぎ分け、幼虫が自主回避しているものだと思っていたのですが、どうも違うようで、幼虫が蛹室に近づいてきた時に蛹室内の蛹が回転運動を行うことにより、その振動を感知して回避するそうです。
故に蛹室内の蛹が不全で死んだりすると、かなりの確率で蛹室を破壊してしまうそうです。
人工蛹室に投入し振動を加えたりすると蛹が腹部を回転させたりしますが、あれは本能的に蛹室を振動させて「ここにいるぞ」と知らせているのかもしれませんね。

そうそう、そもそも「なぜ集団分布が出来るのか?」についてはどうも幼虫の呼気が関係しているそうです。
呼気に含まれる『二酸化炭素』に誘引され、集団で分布出来ているそうです。
幼虫の小顎が人間でいう「鼻」にあたる器官のようで、匂いを感知出来るそうです。
故に、幼虫の呼気に含まれる二酸化炭素に反応して近付いてくるのであれば、人間の呼気に対しても反応するだろうとのことで検証されていました。
マットにストローを突き刺して一定量の呼気を送り込み反応を伺うのですが、案の定幼虫はストロー周辺に集まってきたようです。
ヘラクレスが国産カブトのように集団分布しているのか定かではありませんが、同時蛹化や蛹室の破壊回避の性質から恐らく同じ習性を持っているのだと僕は推測します。
つまり、ヘラの幼虫も恐らく呼気に反応するはずで、所定の場所にストローを突き刺し、呼気を送り込んでやれば誘導することが可能なのではないでしょうか。

おや?
「二酸化炭素を利用することにより幼虫を意図的に誘導できる」のであれば、蛹化前の幼虫を所定の場所に誘導し、意図的に蛹室を形成させることも可能なのでは??

ヘラクレスが二酸化炭素に反応するのか定かでないこと、呼気に含まれる程度の二酸化炭素をマット内にピンポイントで発生させ続けること、二酸化炭素で幼虫を誘導し蛹室を形成させられるとしても「角曲がりになるような劣悪な蛹室」を果たしてどう造形させるかなど、不足点が多々有り困難を極めますが、妄想は青天井に広がります。

将来、中ケース等で大きく成長させ、蛹化前に小ケースにスイッチし、二酸化炭素で幼虫を誘導して意図的に小さな蛹室を造形させられるようになっているかもしれません(笑)

そもそも論で、「蛹室の大きさ程度で羽化する成虫に差があるわけが無い」という声も聞こえて来そうですが、造形面積の小ささ故にエネルギーの消費を抑え、1gでもダイエットを低減出来る可能性があるのであれば僕は功を奏すると思います。
僕が管理している幼虫は還元率の良い低体重血統のものです。
数gが結果に大きく反映されますし、科学的に「意味が無い」を証明されない限りはあらゆる可能性を模索し検証することが大切だと思っています。

なので、これからも沢山のくだらない妄想を膨らませながら、ヘラクレス飼育を存分に楽しみたいな~と思う今日この頃です(笑)

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