新ブリードルームでも小ケース飼育でいくと公言して早一年が経とうとしています。
この間、取り立てて大きな心境の変化も無く、凡そ思惑通りに事が進んでいるなというのが実直な感想です。
かねてより低体重高還元血統の幼虫については小ケース飼育が合理的であり無駄が無いと提言してきましたが、一年間沢山の幼虫に触れ、それはより強固なものとなっています。
肝要なのは高還元血統にのみ通用する飼育法であって、決して体重を乗せる必要のある大型血統には向かないということです。
この辺りごちゃ混ぜに考えてしまうと手痛いしっぺ返しに合うのでご注意下さい。
そういう僕の飼育状況ですが、以前の記事にも書きましたように一定のグループに分け、それぞれのグループ単位で飼育温度やマットの交換サイクルに変化を付けて成長具合を見定めています。
飼育温度を血統別に大雑把に表すと、
«孵化後1年高温飼育の以降低温飼育»
・UB67SAOGN x ティーガー
«3令中期まで高温飼育の以降低温飼育»
・UB67SAOGN – ティーガー x アンビタル零I – FFUB67
・UB67SAOGN – ティーガー x アンビタル零I – アンビタルMD
・UB67SAOGN – ティーガー x T-117 – NO.113
«ほぼ全期間低温飼育»
・アンビタル零I x FFUB67
・アンビタル零I – FFUB67 x Y-170 – T-117
・アンビタル零ー廻
・165T-REX – MT-REX x アンビタル零I – FFUB67
となります。
高温ほど成長スピードが早く幼虫期間が短くなり、低温ほど成長曲線が緩やかに推移し幼虫期間が長くなるであろうと予測していましたが、概ね予想通りの結果を得ています。
しいて誤算をあげるならば、高温飼育を行った「UB67SAOGN x ティーガー」のインラインにおいて、予想を大きく上回る勢いで『早期蛹化』したということでしょうか。
予定では孵化後1年辺りを目処に低温に移行しようと目論んでいましたが、結果は1年弱時点で8割強の幼虫が蛹室をこしらえていしまいました。
試験的要素が強かったので後悔はしていませんが、ここまで一斉に蛹室を形成するとは思っていなかったので少々面食らいました。
おかげで冴えない個体が続出することとなりましたが、早期でも見栄えのする個体は出ています。
まあ例の如く人工蛹室が下手過ぎて不全続出ではありましたが(笑)
流石に観念して、これまで敬遠してきた人工蛹室をついぞ自然蛹室を元に徹底的に研究し、傾斜や起点、それに蛹化後の胸角の形状により反転しやすいよう臨機応変に手直しするなど、ようやく不全を激減させることに成功しつつあります。
当初、深く掘り過ぎていたのと、先端に行くほど傾斜が強くなるような形状だったので、お辞儀した形状の胸角個体ばかりでした。
胸角がお辞儀していると、反転する際にオアシスと干渉し、結果、上手く起き上がれないので翅が伸び切らず、高確率で不全となってしまいます。
人工蛹室は角曲がりを未然に防ぐ為のものであり、蛹化さえ済ませてしまえば「自然蛹室に似せた形状」を維持する必要はありません。
なので下記画像のように先端部分を思い切って切除してやることにしました。
効果は歴然で、こうすることにより反転する際に胸角先端が干渉しなくなり、飛躍的に完品率が向上しました。
勿論、適切な人工蛹室で綺麗に胸角が伸びた個体においては、こうした工夫は特段必要ではなく、完品率も一定の水準を保てるかと思います。
毎回完璧な人工蛹室を作ることが出来れば何も支障は無いのでしょうが、こういった工夫一つで潜在的なリスクを払拭出来るように、人工蛹室にはまだまだ計り知れない未知なる可能性が孕んでいるように思います。
今後、僕は特に「羽化用の人工蛹室」に着目し、より完品率を上げる方法は無いのかと模索しようと思います。
そんなこんなでUB67SAOGN x ティーガーのインラインにつきましては、早期地獄と課題が浮き彫りとなった人工蛹室の拙さを露呈することとなりましたが、打開策と経験を得たという観点では非常に有意義だったなと感じています。
人工蛹室の見直しにより、今後羽化してくるアンビタル系に関しましては、美形個体が多数出てくることと思います。
まだ、あと1頭幼虫期間が17ヶ月を超えた、このラインで一番大きな頭幅の幼虫がいるので期待したいと思います。
残念な結果となったUBインラインですが、その他の低温組においては非常に良好な経過を辿っています。
簡単に少数ずつ手持ちの画像でご紹介しますと、
孵化後14ヶ月のUB67SAOGN – ティーガー x アンビタル零I – FFUB67
同じく14ヶ月のUB67SAOGN – ティーガー x T-117 – NO.113
孵化後12ヶ月のアンビタル零I x FFUB67(CBF2)
同じく12ヶ月のアンビタル零I – FFUB67 x Y-170 – T117
のようになります。
頭幅が抜けて大きいのがやはりアンビタル零I x FFUB67のインラインで、次点がUB67SAOGN – ティーガー x アンビタル零I – FFUB67の幼虫達がとても大きいです。
多数が130gを超えてきそうで、一番大きな137gの幼虫なんて頭幅が19.5mmもありますので、一体どんな形状で蛹化してくるのか今から凄くワクワクしています。
超長角を意識して掛け合わせたアンビタル零I – FFUB67 x Y-170 – T-117の幼虫ですが、先日前蛹98gの小さな個体が♂親と瓜二つの形状で蛹化しました。
期待通り素晴らしい還元率で胸角が伸びています。
近々、蛹室を作ってしまった先程紹介の138gの個体と、前蛹111gの個体2頭が蛹化しますのでこちらも非常に楽しみです。
アンビタル零-廻や165T-REX – MT-REX x アンビタル零I – FFUB67は上記血統より更に低温で飼育しているのでこれからどこまで伸びるのか見ものです。
これから夏以降、前期とは明らかに体重の乗りが違う多数の低温組から、素晴らしい個体がどんどん出てくることと思います。
幼虫期間を意識し、じっくりと大きく育てます。
怪物と呼べる個体と巡り会えることを胸に、これからもよく観察し深く考察を重ね、これまで以上にヘラクレス飼育を楽しみたいと思います。
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